視能訓練士

視能訓練士(Certified Orthoptist)とは

視能訓練士(Certified Orthoptist、以下、CO)は、1971年から施行されている「視能訓練士法」という法律に基づく国家資格をもった医療技術者です。視力・屈折・眼圧・視野など、様々な検査を医師の指示のもとに行い、眼科医療に携わっています。また、斜視や弱視、視機能に障害を持つ方に、矯正訓練指導やロービジョンケアを行うことも仕事のひとつです。

当院では現在12名のCOが在籍しております。検査業務以外にも、臨床教育実習生を積極的に受け入れ、後進育成に尽力しています。また、学会・院外での研修会参加や院内でも毎月勉強会を開催し、より質の高い医療を提供するために切磋琢磨しております。

広島大学病院視能訓練士の特色

1)斜視弱視外来

何らかの原因により、両眼の視線が正しく目標に向かわない状態(斜視)や視力の発達が抑えられ、止まってしまった状態(弱視)の方を対象に毎週火曜日に行っています。乳幼児から大人まで幅広い年齢層を対象としていますが、小児の患者さんが多く受診しています。視機能の発達にはある程度期限があると言われており、斜視や弱視はその期間内での早期発見と早期治療が求められるので、私たちCOはお子さんの年齢や検査時の状態に応じて個々に合わせた視機能検査をおこない、斜視や弱視に対して正常な両眼視機能の獲得や視力向上を目的とした視能訓練を行っています。

ロービジョン外来

眼疾患や外傷などにより視力や視野が低下した方や眩しさで苦しむ方、日常生活で視覚的困難を感じている方を対象に問診、視機能検査、補装具の選定・処方・訓練を行っています。こちらの外来にも幼児から高齢者と幅広い年齢層の患者さんが受診しています。

(拡大鏡、拡大読書器、単眼鏡、遮光眼鏡、拡大読書器などの選定、日常生活上の工夫や支援機関の紹介などを行っています。)

専門分野の選択・分業

入職3年目になると各自専門分野を選択し、より専門的な知識、検査、訓練技術の習得を目指しております。(ロービジョン訓練・レーザー生体共焦点顕微鏡・網膜電図・視能訓練など。)大学病院ならではの専門的な検査も多いため、その分野に習熟したCOを育成し、より精度の高い検査結果を提供出来るよう皆努力を重ねています。

業務内容

視機能検査

視力・屈折・眼位・視野などを測定する眼科一般検査から、光干渉断層検査や蛍光眼底造影写真撮影、網膜電図(ERG、mfERG)といった特殊検査など、多岐に渡ります。医師の診断や治療に必要なデータを提供し、眼科診療をサポートしています。 

2)視能矯正

患者さんに応じた視機能検査を行い、弱視や斜視に対しては視力向上や正常な両眼視機能の獲得を目的とした視能訓練を行っています。また、眼鏡処方は完全予約制とし、1人1人のニーズをしっかり聴取した上で適した眼鏡を作成できるように努めています。

3 ロービジョンケア

日常生活を送る上で視覚的困難を感じている方を対象に行っています。問診、視機能評価(視力・視野・斜視検査など)を行い、その方にあった便利グッズの紹介や日常生活上のアドバイスを行っています。

教育・研究

1)学生臨床教育実習指導

令和1年度は全国の養成校から5名を受け入れました。当院では学生実習指導マニュアルを作成し、各学生に対して一人ずつ指導担当者を就けています。マニュアルに沿って実習を進めることで指導内容の偏りを少なくし、また担当者を就けることで学生の進捗状況を確認し、実習生と毎週末に総括を行い、その内容を全員で周知しながら指導を行っています。

学術活動

令和2年度業績は以下の通りです。

〈学会発表〉

【第61回日本視能矯正学会 (WEB開催 10月3日~10月16日)】

1.中村祐子、望月英毅、木内良明:一般眼科診療におけるSpotTM Vision Screenerの使用経験

2.横山健治、原田陽介、木内良明:視神経炎に対する無散瞳皮膚電極を用いた多局所網膜電図でのPhNR測定

3.吉永美紀 、横山健治、原田陽介、日山知奈、木内良明:フォークト・小柳・原田病における網膜剥離と多局所網膜電図の振幅

【第21回 日本ロービジョン学会学術総会 (WEB開催 7月3日~7月12日)】

佐藤佑二、奈良井章人、木内良明:広島大学病院における遮光眼鏡処方の傾向

【第56回日本眼光学学会総会 (WEB開催 9月5日~9月22日)】

中新井田悠太:片眼遮閉下と両眼開放下における中間距離の屈折値変化

〈和文著書執筆〉

1.本武拓真: 角膜内皮細胞顕微鏡検査(スペキュラマイクロスコープ). 眼科ケア2020秋季増刊. 106-112, 2020.10.25   ■メディカ出版

2.本武拓真: 角膜検査(前眼部OCT). 眼科ケア2020秋季増刊. 113-118, 2020.10.25   ■メディカ出版

3.本武拓真: 収差検査(ウェーブフロントアナライザー). 眼科ケア2020秋季増刊. 119-125, 2020.10.25   ■メディカ出版

4.本武拓真: 涙液検査(シルマー試験). 眼科ケア2020秋季増刊. 126-130, 2020.10.25   ■メディカ出版

5.佐藤佑二: 緑内障の検査. 眼科ケア2020秋季増刊. 258-265, 2020.10.25   ■メディカ出版

【先輩から一言】

入職6年目の山本です。私は産休代替職員として入職し、2年目からは契約職員として勤務しておりました。第1子を出産後、小児に対する気持ちの変化を感じ、視能訓練士として、一人の母親として、目の前の子供のために私ができる最大限のことを考え、行動していきたいと思うようになりました。今年からは常勤職員となり、より精進し、近い将来斜視弱視訓練の専門分野を立ち上げたいと考えております。

現在、子育てを行いながら勤務する視能訓練士は複数人おり、急なお休みに対しても同僚に理解してもらえていると感じます。また、家族も私の仕事への意欲を理解してくれており、仕事と家庭の両方の充実を日々感じています。大学病院への就職に対して不安に思う方もいるかもしれませんが、教育体制は整っているため、1つ1つ丁寧に先輩の指導を受けることができます。検査が多岐にわたることや学会発表・研究にも取り組みやすい環境は大学病院ならではだと思います。視能訓練士として、やりがいや成長を感じられる職場です。